眠気覚ましや口がさみしいときに「コーヒーが手放せない」という方は多いのではないでしょうか。しかしコーヒーに頼りすぎていると、思わぬ不調を招きかねません。
最近以下のような不調を感じている場合は、副腎疲労の可能性があるので注意が必要です。
・やる気が出ない、だるい
・十分に寝たのに、疲れが取れない
・気分が落ち込む
・イライラしやすい
副腎疲労とは、副腎が疲れ果ててストレスへの抵抗力が低下している状態を指します。
コーヒーと副腎疲労の関係性やコーヒーをやめられないときの対処法・カフェインを摂らないほうが良い人についても管理栄養士目線でお伝えしていくので、ぜひ実践してイキイキとした毎日を取り戻しましょう。
そもそも、どうして副腎疲労は起こるの?
副腎疲労を招く原因は、「コルチゾール」の過剰分泌です。コルチゾールは、ストレスを感じたときに副腎皮質から分泌されます。
そのため、慢性的なストレスがかかると副腎はコルチゾールを分泌し続けなければならず、疲弊してしまうのです。
副腎は、クルミほどの小さな臓器で左右の腎臓の上部にあります。私たちが生きるために必要な50種類以上のホルモンを分泌しており、”ホルモンの工場“とも呼ばれるのです。
副腎が分泌するホルモンの中で、とくに重要なのが「コルチゾール」であり、以下の役割を担っています。
【コルチゾールの働き】
・血糖の維持
・血圧の維持
・免疫機能の調整
・神経作用の調整
・炎症を抑える
つまり、あらゆるストレスから身を守り、身体を正常に維持するためにコルチゾールは欠かせないのです。
しかし、慢性的に強いストレスがかかるとコルチゾールが大量に分泌され続けるため、副腎が疲れて果ててしまいます。すると、ストレスに打ち勝てなくなり、あらゆる不調を招くのです。
副腎疲労の症状
以下の項目に当てはまる人は、副腎が疲れている可能性があるので、チェックしてみましょう。
・いつもだるくて疲れを感じる
・朝起きるのが辛い
・日中はやる気が出ないが、夜は元気になる
・落ち込みやすい
・カフェイン(コーヒーやエナジードリンク)が欠かせない
・風邪をひきやすく、治りにくい
コーヒーが副腎疲労を招くのは「カフェインの過剰摂取」が原因
コーヒーが副腎疲労を招く原因は「カフェインの過剰摂取」にあります。カフェインは、副腎を刺激してアドレナリン(興奮ホルモン)の分泌を促します。
アドレナリンは血糖値や血圧を上げる作用があるので、血糖値や血圧を一定に維持するためにコルチゾールが消費されるのです。そのため、カフェインを過剰に摂取すると副腎は大量のコルチゾールを分泌しなければならないので、副腎疲労を招きます。
カフェインは、コーヒー以外にもエナジードリンクやお茶にも注意
コーヒー以外にもカフェインを含む食品はあるので覚えておきましょう。
身近な飲料のカフェイン量を紹介します。
飲料 |
カフェイン含有量(100mlあたり) |
玉露 |
160mg |
コーヒー |
60mg |
紅茶 |
30mg |
エナジードリンク |
32mg~300 mg |
煎茶 |
20mg |
ウーロン茶 |
20mg |
出典:「食品中のカフェイン」/食品安全委員会
日本人の平均的なカフェイン摂取量は一日260㎎ほどとされており、日常的に飲むコーヒーとお茶からの摂取が大半です。
副腎疲労の症状を感じている人は、コーヒー以外の飲料のカフェイン量も考慮してカフェインレスの飲料に代えるなど工夫してみましょう。
一日に摂取してもいいカフェイン上限量は400㎎!?
日本国内ではカフェインの許容摂取量はとくに定められていませんが、アメリカでは健康な大人が摂取しても体に悪影響をおよぼさないカフェイン量を「一日400㎎まで」としています。
コーヒー1杯(150ml)には、90㎎ほどのカフェインが含まれているため、コーヒーを一日に5杯以上飲むとカフェインの過剰摂取のリスクが懸念されるでしょう。
(参考:「カフェインの過剰摂取について」/農林水産省)
ただし、カフェインに対する感受性は個人差が大きいので、少量のカフェイン摂取であっても頭痛や不眠などの不調が現れる場合もあります。ご自身の体調をよく観察して、自分に合った量を見つけることが大切です。
副腎疲労を防ぐためには、コーヒーは一日2杯未満に
前述したとおり、カフェインの代謝能力は個人差が大きいためコーヒーの許容量も人それぞれです。
そのためコーヒーの許容量は諸説ありますが、平均的な人であれば一日2杯(カフェイン180㎎/300ml中)程度であれば、健康への悪影響はないと考えられます。
(出典:「日常生活の中におけるカフェイン摂取ー作用機序と安全性評価」/東京福祉大学・大学院 栗原久)
副腎疲労を改善するには?
副腎疲労の自覚症状がある場合は、以下の3つを試してみましょう。
ビタミンCを積極的に補給しよう
コルチゾールを作るにはビタミンCが必要です。そのため、ストレスが溜まるとコルチゾールを分泌して対処しようとして、ビタミンCが大量に消費されてしまいます。
キウイやイチゴ・赤ピーマンといったビタミンCを多く含む食品を積極的に食べて、副腎の負担を軽減しましょう。
しっかり睡眠時間を確保しよう
副腎を休ませるには、寝るのが一番です。ぐっすり眠っている深夜のコルチゾールの分泌量は、最も多い早朝の1/10しか分泌されません。しっかり睡眠時間を確保して、副腎を休ませてあげましょう。
コーヒーやアルコールを控えよう
前述したとおり、コーヒーの飲み過ぎはカフェインの過剰摂取となり副腎に負担をかけます。コーヒーだけでなくお茶やエナジードリンクといったカフェイン入りの飲料を控えたり、カフェインレスの飲料を取り入れたりしましょう。
また、アルコールの飲み過ぎも副腎に負担をかけるので適量を守ることが大切です。
副腎疲労をケアしたいけど、コーヒーがやめられないときの対処法は?
コーヒー好きな方は、量を減らすことも苦痛に感じてしまいますよね。
そんなときは、まずはレギュラーコーヒーとカフェインレスコーヒーを交互に飲むことからスタートするのがよいでしょう。コーヒーの味と香りを楽しめるので、ストレスを軽減しながらカフェイン量を減らせます。
自分の体調の変化を観察しながら、2~3週間かけて少しずつカフェイン量を減らしていけば、自分の適量が見つかるはずです。
副腎疲労の原因となるコーヒーはデメリットだけでなくメリットもたくさん!
ティータイムをより健康的に楽しむためにも、コーヒーのメリットとデメリットを押さえておきましょう。
コーヒーのメリット
まずは、コーヒーのメリットを4つご紹介します。
眠気がなくなる・集中力がアップする
コーヒーに含まれるカフェインは、通常の食品成分が通過できない血液脳関門(血液中から脳内組織へ物質が侵入するのを阻害する仕組み)をすり抜け、脳内に移行します。
脳内にたどり着いたカフェインは、交感神経を刺激して脳を覚醒し、気分を高揚させたり集中力や注意力を高めたりするのです。
疲労感を軽減する
コーヒーに含まれるカフェインの作用で、神経や筋肉を興奮させて疲労感を和らげます。
一日に2杯以上のコーヒーで認知症リスクが約1/2に
2021年に発表された日本の研究において、コーヒーをよく飲む人ほど認知症のリスクが低いことが報告されています。とくにコーヒーを一日2杯以上飲んでいる人は、常飲しない人に比べて認知症リスクが約1/2だったのです。
(参考:「日本人の高齢者におけるコーヒー、緑茶、カフェインと認知症リスクとの関連」/2021年アメリカ老年医学会)
そのほか、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症を低下させるといった研究結果も存在しており、コーヒーが脳にもたらす影響を解明するための研究が進んでいます。
脂肪の燃焼効果がある
コーヒーに含まれるカフェインには、中性脂肪を燃焼する効果があります。コーヒーを飲むと、カフェインの作用により中性脂肪が分解されるので、運動を組み合わせると効率的に脂肪燃焼できます。
運動するタイミングは、血中の遊離脂肪酸が上昇するコーヒー摂取後1時間ほどがおすすめです。
コーヒーのデメリット
コーヒーは、適度に摂取する分にはメリットを得られますが、過剰に摂取してしまうと副腎疲労を招く以外にも体に悪影響を与えてしまいます。コーヒーのデメリット3つを確認しましょう。
夜に摂取すると眠れなくなる
「寝る前6時間以内」にカフェインを摂取すると、睡眠に悪影響を与えるという研究結果があります。
摂取したカフェインが体内で半分に減るまでにかかる時間は、約4~6時間が一般的です。ただし、カフェインの代謝能力には個人差があり、2時間で半減する人もいれば、10時間かかる人もいます。
睡眠に影響しないようにコーヒーを楽しむための門限は、なんと「14時まで」とされているのです。また、高齢になるほど代謝能力が低下する事実も覚えておきましょう。
(参考:「「コーヒーを夜中にも飲む人」に襲いかかる超危険」/東洋経済オンライン)
さらに、夕方以降にコーヒーを飲むのは、副腎疲労のもとです。通常であれば、副腎皮質から分泌されるコルチゾール量は、早朝にピークを迎え夕方から夜は早朝の半分以下になります。コルチゾールの分泌量の変動により、朝の目覚めを促し、夜はお休みモードにしてくれるのです。
しかし、夕方以降もコーヒーを飲んでいる場合は、コーヒーに含まれるカフェインの作用によりコルチゾールの分泌が促されるため、副腎は夕方以降も休めず疲弊してしまうのです。
攻撃的になる
コーヒーに含まれるカフェインは、攻撃反応を高めるホルモン(アドレナリンやコルチゾール)の分泌を促す働きがあります。カフェインが過剰になると、神経が過敏になりイライラと攻撃的な態度を招くのです。
栄養不足を招く
コーヒーを飲む習慣のある方の中には、朝食代わりや日中の空腹をしのぐために飲んでいる方もいるのではないでしょうか。私たちの体はエネルギーがないと機能しませんが、空腹時であっても考えたり歩いたりできるのは糖新生(糖質以外の物質を使ってエネルギーを作り出す)の仕組みがあるからです。
コーヒーに含まれるカフェインの作用で分泌されたアドレナリンは、この糖新生を促す作用があります。
糖新生は、多くの栄養素が関わってエネルギーを作り出す仕組みなので、たくさんのビタミンやミネラルも消費してしまうのです。
一時的であれば問題ありませんが、毎日朝食抜きで昼食までコーヒーを何杯も飲んで過ごしている場合は、糖新生が回り続けて栄養不足を招く可能性があるので注意しましょう。
コーヒーを飲まない(カフェインを摂らない)方がいい人は?
なかには、コーヒーが体質に合わないと感じている人もいるでしょう。
以下に当てはまる人は、コーヒーを控えることをおすすめします。
コーヒーを飲むと体調が悪くなる人
少量のコーヒーを飲んで、頭痛や不眠といった不調が現れる人は、カフェイン不耐症の可能性があります。カフェインの代謝を遅くする要因は以下のとおりです。
・カフェインの刺激を受けやすくする基礎疾患
・特定の服薬
・年齢(子どもや高齢者)
・気分障害を起こしやすい人
・遺伝的な消化酵素の欠陥
カフェインアレルギーの人
非常にまれですが、日本でもカフェインアレルギーが確認されています。微量のカフェイン摂取であっても、以下の症状を複合的に発症する場合があるので、コーヒーは飲まないようにしましょう。
・皮膚症状(皮膚のかゆみや蕁麻疹など)
・呼吸器症状(咳や息苦しさなど)
・粘膜症状(唇の腫れや目のかゆみなど)
・循環器症状(血圧低下など)
まとめ
コーヒーは、頭がリフレッシュできるので眠気覚ましに手放せない方が多いですが、カフェインの興奮作用で体調が良いと勘違いしがちです。コーヒーの多飲によりビタミンやミネラルが大量消費されるため、「疲れやすい」「だるい」といった副腎疲労を招く危険があります。
カフェインの過剰摂取が原因で副腎疲労を抱えている方は、カフェインを適量に抑えることが改善への一歩です。
しかし、コーヒーが手放せなくなっている方が急にカフェインを全く摂らなくなると、イライラ・疲労感・頭痛といった離脱症状が現れる場合があります。少しずつコーヒーの量を減らして自分のちょうどよい量を見つけてみてくださいね。
【執筆者】
クオルセレクト 執筆担当:管理栄養士 emimi
(給食会社/病院/保育園等で給食/栄養管理職を経て、現在健康コラム/レシピ等執筆)